記念誌制作・社史づくりのノウハウが分かる物語イメージ

【登場人物】
山田和夫……都内の企業に勤める28歳のサラリーマン。営業部に所属している。創立50周年に向けた記念誌制作担当者に任じられた。
岡本雄介……42歳男性。かつて編集プロダクションに勤めていたが、脱サラして喫茶店のオーナーに。マスターとして店に立つ毎日を送っている。

記念誌制作物語:第二回 なぜか突然、記念誌担当に‐02

2016/05/09

「マスター、俺、会社でなんだかめんどくさいこと押し付けられちゃって。うちの会社、来年50周年なんだけど、それにあわせて作る記念誌の制作を任されてさぁ。ホント勘弁してほしいわぁ」

マスターと呼ばれた男は、やはり返事をしない。その代わり、レジの下に隠すように置かれたCDプレーヤーのスイッチを入れた。プレイヤーのディスプレイに「Track 1」の文字が表示される。

狭い店内にボソボソと会話を交わしているようなベースとピアノの音が鳴り始める。まるで眠い目をこすりながら遠慮がちに音を発しているような印象だ。そして静かに軟体動物がノソノソとうねるような印象的なベースのリフレインが始まり、調子を整えるようなピアノの和音が響く。そして、ホーンセクションがハーモニーを奏でたところで、カウンターの向こうの男がやっと口を開いた。

「ああ、それは大変ですね」

 

小説イラスト02

 

無表情でそう答えた、この男の名は岡本雄介。歳は42。5年前に勤めていた会社を辞め、この店を開いた。喫茶店と言えば、飲み物の他にサンドイッチなどの軽食もメニューにあるのが普通だが、この店のメニューはコーヒーのみ。そういう訳でひたすらコーヒーを淹れるのが岡本の毎日の仕事である。この商売っ気のなさだ。昼時なのに客が一人だけというのもうなづける。

そして、岡本は喫茶店のマスターにありがちな、ジャズ好きだ。といっても、ものすごく音楽に詳しい訳でも、膨大なレコードコレクションがある訳でもない。音楽を聴くなら、なんとなくジャズを選ぶ――という位のものだ。所有するCDもいわゆる名盤と評されるタイトルばかり。店のカウンターの下にも、その類のCDが何枚か、綺麗に並べられている。ちなみに今かかっているCDのジャケットには「MILES DAVIS」という白い大きな文字と「Kind of Blue」という青い小さな文字が並んで書かれている。

曲は、テーマパートが終わり、トランペットのソロパートになった。繊細かつ艶のあるトランペットの音色が店内に響いたところで、山田和夫が「本当に」とつぶやきながら、もう一口コーヒーを啜った。

【著者プロフィール】
本間 幹(ほんまもとき)/「本間制作室」の編集、ライター担当。1973年、東京都生まれ。大学卒業後、出版社、広告制作会社勤務を経て、2006年、編集プロダクション入社。旅行誌、情報誌を中心にディレクション、編集、取材、執筆業務に従事する。2011年に編集プロダクション「本間制作室」立ち上げ。現在、ビジネス誌や記念誌・社史の制作に携わる。

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