記念誌制作・社史づくりのノウハウが分かる物語イメージ

【登場人物】
山田和夫……都内の企業に勤める28歳のサラリーマン。営業部に所属している。創立50周年に向けた記念誌制作担当者に任じられた。
岡本雄介……42歳男性。かつて編集プロダクションに勤めていたが、脱サラして喫茶店のオーナーに。マスターとして店に立つ毎日を送っている。

記念誌制作物語:第一回 なぜか突然、記念誌担当に‐01

2016/04/09

カウンターの向こうで40歳代と思しき男がコーヒーを淹れている。右手のポットから、細かく挽いたコーヒー豆が詰まったドリッパーにお湯が注がれると、室内に香ばしい香りが漂い始めた――。

カウンターのこちら側には若い男が一人座っている。その香りを確かめるように彼は深く息を吸い込んだ。その途端、それまで眉間にしわを寄せて難しい顔をしていた彼の表情が少し和らぐ。そして、「なんで、俺が記念誌なんかやらなきゃいけないんだ」とつぶやいた。

椅子が5つ並ぶカウンターと4人掛けのテーブルが2セットという、こじんまりとした、この喫茶店には彼の他に客はいない。BGMもない店内は静寂に包まれているから、どんなに小さな声でも聞き漏らすことはないだろう。だが、コーヒーを淹れる男は彼のつぶやきに何も答えない。

 

小説イラスト01

 

「お待たせしました」

若い男は、その声と共に目の前に置かれたカップを右手で持ち上げ、コーヒーを一口啜り、「はぁーっ」と深い溜息を漏らすと、また眉間にしわを寄せた。

彼の名は山田和夫と言う。歳は28で、この喫茶店から歩いて5分ほどのところの会社に勤めている。

営業部に所属する山田は、2浪して入った大学を出てすぐ今の会社に入社した。これまで3年以上仕事をしてきて、「自分は結構仕事ができる方だ」と思っている。しかし、周りの評価はそれほど高くない。確かに仕事はミスも少なく、きっちりとこなすが、どちらかと言うと自主性に乏しく、アピールも下手なので手柄が見え難いのだろう。

プライベートも仕事同様、淡々としたものである。交際相手もおらず、特別熱中している趣味もない。彼は、この生活に満足しているわけではないが、「今の人生を変えなければいけない」とか、「新しいことをやってみよう」などとは考えない。何かにチャレンジして失敗するより、刺激や楽しみがなくても傷付くことが少ない今の生活を手放したくないのだ。

そんな彼が、今から1時間ほど前、直属の上司に呼び出され、思いがけない言葉を掛けられた。

「山田君。記念誌作りの担当、君に決まったから。よろしく!」と。

【著者プロフィール】
本間 幹(ほんまもとき)/「本間制作室」の編集、ライター担当。1973年、東京都生まれ。大学卒業後、出版社、広告制作会社勤務を経て、2006年、編集プロダクション入社。旅行誌、情報誌を中心にディレクション、編集、取材、執筆業務に従事する。2011年に編集プロダクション「本間制作室」立ち上げ。現在、ビジネス誌や記念誌・社史の制作に携わる。

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